ゆるふわふぢげたんカフェブログ

森の小さなカフェの常連の英語講師(藤本亮太郎)によるブログです。お店の日常をあげているインスタもよろしくおねがいします。@koshinkokunihon

『英語教育』5月号「和文英訳演習室」の問題意識

5月2日に和文英訳演習室に投稿した.英文和訳とは違ってこちらは2度目.今回はいろいろと前に予定が入っていて忙しかったので,締切日のギリギリ投稿になった.本日某界隈で反省会が行われるのだが,自分はそれに仕事で参加できないのでここに問題意識など共有しておく.

 

【事前準備について】

チーズの知識は皆無だったので,ブルーチーズに関する情報を仕入れるべく適当にGoogle検索で調べた.「ブルーチーズの製造工程」に関して複数のウェブサイトを参照した.特定的な状況なので使う語彙も自然限定されてくる.ここで得た語彙の多くをそのまま訳文に載っけた.あと忙しくて訳文作れない間はスーパーで一番高いブルーチーズ買ってきたもぐもぐ食べてた.本当に美味しくてビビった.

 

【DeepL等の翻訳ツールについて】

自分で出した英文をDeepLに和訳させ,出てきた和文を参考にしながら英文の微調整をした.和文をそのまま翻訳ツールに突っ込むことはしない.Google検索エンジンTwitterの検索機能をコーパス代わりに使って表現の妥当性を調べたりはした.今回に限らず,この一連の作業は自分で英文作るときによくやる.時間があったらHi NativeとかHello Talkで野良ネイティブに質問したりもするのだが,今回は時間がなかったのでそこまでやってない.

 

和文英訳の問題意識】

訳文作成当時に加え,いま見返して新たに思いつかれる事項にも触れる.

 

第1段落

Most blue cheeses are produced from cow milk, but there are some types whose ingredients include the milk of other animals; for example, Roquefort owes its distinctly unique flavor to sheep milk. The blue, marble-like patterns of blue cheese are developed by sprinkling mold powder into the raw milk or the curd in its making process. Different molds are used for different cheeses.

 

準備でウェブサイトを読んでいたらMost blue cheeses...と種類を表すための複数形が何度か出てきたのでこれを使った.下準備なしだとこれは思いつかなかったと思う.「ロックフォールのような,ひときわ異彩を放つチーズ」の部分はうまく処理できたかなと思う.「用いる青カビは…異なります」はdifferent/differentで畳み掛ける「十人十色」の技で終わらせた.

 

第2段落

During the aging process, the cheese is pierced through with needles so that fresh air can be let into the inside of the curd, helping the mold to flourish. Then, in order to enhance its singular flavor and aroma as fully as possible, the blue cheese has to be kept in a  condition of moderate temperature and high humidity for a long, patience-requiring period.

 

the cheese is pierced throughの部分は悩んだ.penetrated/spiked/needledのどれがいいかで悩み,辞書を引いて単に「刺す」にとどまらず「穴を開ける」の意味に合致すると思われたpierceを選んだ.最初,穴を複数個開けることをきちんと意味するように,pierced through and throughという表現をしていたのだが,淡々とした説明の描写を邪魔するような気がしたのでやめた.「強い個性」はsingularを選んだが,exceptionalも良かったかも.has to be kept...のところは最初はhas to be left...にしていたのだが,いろいろとウェブサイトを読んでいるとチーズの熟成は単に放置するというよりも入念に環境設定してやるなど大変な手をかけてやらないといけないのがわかったので,意図性のあるkeptに変えた.「徹底した」はpatience-requiringとしたが,そうではなくて「手間暇かけて」の意味だったかもしれない.painstaking effort的なのをうまく入れてやるのが良かったかも.

 

第3段落

Various factors such as which kind it is or how long it is ripened contribute to the great diversity of its flavors and textures: some taste pleasantly piquant while others taste robustly rich; and some feel creamy while others crumbly. The fact is that each and every one of the blue cheeses is altogether different from one another, which is why we recommend not considering them as a single category but respecting their differences in features and flavors.

 

和文の一番最初の「熟成期間や種類によって」がよく分からなかった.「種類」が「選ぶ乳の種類」とか「青カビの種類」なら分かる.しかしこれが「ブルーチーズの種類」を表すならばよく分からない.というのも,ブルーチーズの種類こそ熟成期間によって様々に変わってくるはずなので(ここは和文を書いた人間がよく考えずに書いたところではないのか?)「ブルーチーズには使用するカビや乳によって様々な種類があるが,これもまた熟成期間によって変わる」ならばまだ分かる.こう捉えると,「種類や(あるいは同じ種類でも)熟成期間によって」となるのが自然なので,勝手に順番を変えた.ここは下調べで裏付けが取れているわけでもないので,あえてぼかす意図も込めた.ブルーチーズの種類と書かずにwhich kind it isとitを使った.ここが自分の中で一番分からなかった.pleasantly piquant/robustly richは韻を踏もうとした.creamyとcrumblyもたまたまウェブサイトを読んでいて見つけた表現だが,きれいに韻を踏んでくれた.「このため」の前後は,きちんと因果関係が機能するように和文の表現を変えた.最後,differences in features and flavorsもfの音をどちらにも入れた.ここは複数形にするべきではなかったのかも.詳しい人いたら教えてください.

 

以上,労が始まる前に駆け込みで思ったこと,新たに思いついたことなどをつらつらと書いてみた.ほいじゃあまたの.